Design&trade震災復興活動委員会|JIDA東日本ブロック                     

Design&trade震災復興活動委員会 2013年度
仮設住宅でのモノづくり支援と現地検証

文/佐野 正

2年間支援をしている仮設住宅でのモノづくりの継続と検証。また被災地訪問・アンケート・ヒアリングを実施することで、3年目以降の新たな課題・次の災害への教訓となる事柄を見出す。

1:年間活動報告

デザインの社会的活動として2011年の東日本大震災直後にスタートした「Design&trade 震災復興活動」。その3年間のまとめとして、前年度からの“支援継続“と、アンケート及び被災地ヒアリングによる”支援効果の検証“、そして”新たな課題の抽出“を1年のテーマとした。

2011年実施した「ココロと暮らし彩るモノ支援/生活物資配布」「被災者による被災者のためのモノづくり/座椅子づくり」。2012年実施の「仮設住宅でのモノづくり支援/しし福宝箱」「アスファルトペイント」等々、出来るだけリアルに役立つ支援活動を直接的に行ってきた。

その総括としては、予想外の災害に対しては画一的な思考の支援では必ずミスマッチが生じ、1箇所で成功した支援でも他所では成立しづらい。被災者に視点を置いた場合、現地でのコミュニケーションで解決策が見つかり、予想以上の効果が出る場合がほとんどであった。

身の回りの生活品で求められるモノはとても多く、それは流通している商品とは限らず、被災者自ら製作したい希望も多いため、道具・材料・製作可能なデザインを支援することで役立てることが出来る。東北被災地では現在でも継続中であり、今からでも支援できる事は沢山存在する。また、そのような姿勢がいつか起こりうる震災に備えである。

2:年間活動報告

a: 仮設住宅でのモノづくり支援、

昨年から武蔵美学生とのコラボではじめた、仮設住宅でのモノづくり「しし箱宝箱」の継続的な支援として、商品としての販路拡大協力と、量産2ロット目の調整・協力など行った。

「デザイン→生産→販売→次への材料調達」という流れの構築を支援として完結した。それに伴い人が集まりクリエイティブな協働活動をすることが、仮設住宅でのコミュニティ形成に大きく役立ったことが予想外の効果だった。

b: 震災復興支援の関するアンケート調査・被災地ヒアリング

2011年よりDesign&trade震災復興活動が活動をしてきた支援(生活物資配布、大工道具提供、ミシン配布、モノ作り支援など)どのように活かされ、その後どのような復興の手助けになるのか検証を行う。また、活動で関わりを持った地域の行政・被災者の方々を対象にアンケート調査を行い、Design&trade以外の支援でも有効であったものなど現地の声を参考に、復興支援/災害対策(社会貢献につながるデザイン)のあるべき姿を検証する。また次への災害へ向けて考察する。

・日時:2013年12月14~15日


・参加者:5人

【 調査・検証内容 】

●生活物資配布について

・配布のタイミング
・必要だったもの、不要だったもの・・時期的(季節や時間軸)に必要だったもの
・行政の供給、他のボランティアがどの様な支援が有効だったか。

●道具配布の活用について

・大工道具の支給(二カ所)についてその後どの様に活かされているか。
・ミシン配布について、どの様に活かされたか。

●モノづくり支援について
・東松島、南三陸の支援施設の現状と今後の方針、支援の必要性を調査。

●他の団体の支援について
・時期と内容、その有効性について調査。
・調査する支援の分野は、デザインに密接な関係にある「生活」「コミュニティー」「まちづくり」「商工業」「情報」などに絞って行なう。


今回、アンケートに答えて頂けたのは、東松島ひまわり集会所と南三陸平成の森テニスコート仮設、および七ヶ浜中学校の生徒・教員。またヒアリング協力頂いたのは多賀城の仮設管理を市から委託されている共立メンテナンス、および東松島ひまわり集会場のみなさんです。

各方面(国や市、メディア等)のアンケートの嵐で、仮設住宅地でのアンケート行為は困難です!と言われたのですが、今回協力くださった方々はDesign&Tradeと繋がりが深い所ばかりで、情報提供を頂き感謝です。

「生きる」→「暮らす」→「自立」

数字にしてしまうと、誰もが想像できそうな・・しかし、実際にヒアリングしてみると、同じ食料品でも「水がない」「熱がない」という事態をどれだけの人が配慮して支援したでしょうか?サプリメントや粉ミルク・・一見よさそうですが水が無ければ、ですね。

七ヶ浜中学は津波を受けた学校です。今でも校舎は仮設で校庭には仮設住宅が並んでいます。

生徒の1/4の家庭は津波被害をうけており、仮設に住む生徒、そうでない生徒混合の回答です。

この地域もライフラインの寸断で、食料品の内訳の多くが「水」そのものなのです。

グラフでは伝えきれないヒアリング内容とアンケートに記入頂いた内容をまとめたので、そちらをご覧いただけると、メディアが報道しない内容や、なるほどと思わせるもの、そして、今後起こりうる災害にどう備えるべきか参考にして頂ければ幸いです。
尚、この報告内容は宮城の特定エリアの場合であり、福島など別の環境にはそのまま当てはまらないことは想像で察しいただければと思います。

国や県、市といった行政ができることには制限があります。
それは「平等」という制限です。
避難者が100人いて物資が50個しかなければ、配ることができないのです。
逆もあります。100人いる仮設に「もも」が100個届いた・・全員に強制的に配られますが次の朝、ごみに出されてしまう・・果物はアレルギー性があるので考え物です。つまり、完全な平等などありえないわけで、とかく大きな仮設エリアには大きな支援や芸能がはいってゆくけど、小さなところはあまりこない・・

Design&tradeはそこはわかっていませんでしたが、小さな所狙いで行ったのはある意味正解だったのかも知れません。

デザインが社会活動に役立つのか?ソーシャルデザインとは何か?私達デザイナーは整理・カテゴリズして考えがちだが、その様なプロセスは空回りしがちである。デザイン支援と言えどもリアルに役立つためには自ら被災地に赴き、人々とふれあいながら直接的に課題に対応してゆく方法が、手間は掛かるが実行する唯一の手段です。

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c:震災復興支援の関するアンケート調査報告会

・日時:2014年3月11日
・参加者:20人

●2013年12月14~15日に行ったアンケートおよびヒアリング報告と、意見交換会開催

●震災から3年…被災地では何が有効か?また、これからの新たな課題と災害への教訓など

●竹原あき子さんフォーラム「原発とモナリザ」より最近の海外原発事情など

更新日:2014.05.03 (土) 00:17 - (JST)