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エレキ・ブームがくれたデザイナーへの道 by大縄茂

デザインへ向くきっかけは小生が中学生のときの姉の言葉だった。


その頃(60年代前半)はビートルズが若者の間で大人気。いわゆるグループサウンズの
台頭でプロ、アマを問わず多くのコピーバンドや個性的なバンドが産まれていた。

小生は英語の歌詞に馴染めなかったのかインストゥルメンタル系の音楽に興味を持った。
その筆頭といえばやはりベンチャーズだろう。たちまち虜となった小生は仲間とグループを
つくり勉強そっちのけで日夜エレキギターの練習に励んだ。仲間の一人の家が焼き菓子の
大きな工場内にあり、誰もいない日曜日は大音量での練習にはうってつけとあって毎週
通っていたものだ。

新曲が出る度レコードを買い、ジャケットを壁に貼り出していった。
「うーんいいなー」と眺めているうちになんとなく、すべてのジャケットに印刷された
グループ名のロゴ(図)を描き写していた。



ちょうど姉が部屋にやって来て、「へーっ、そういうのってレタリングっていうんだよ」という。
そしてそのような仕事があることも教えてくれた。

この時期もう一つ熱中していたのはオーディオだった。ラジオ雑誌を参考に自分で真空管
アンプをつくりこれでベンチャーズを聞くわけである。アンプづくりはシャーシへの部品
レイアウトを考えることから始まるわけだが、姉の話からこの行為もデザインであることを知った。
今思えばこの出来事が、ぼんやりとではあるが、自身にデザイナーとなる意識を
芽生えさせたのではないかと思っている。

結果、デザインの教育を受け就職、三つの会社を経てその後1977年独立。
コンピュータやその周辺機器のプロダクトデザインが最初の仕事だった。(写真)



それから少し経った頃、友人のグラフィックデザイナーと一緒に事務所を借りた。
忙しい彼の仕事を手伝うことも多く畑違いのグラフィックデザインではあったが、
ベンチャーズのロゴを見よう見まねで描いていたあの頃を思い出し
グラフィックワークを楽しんでいたものだ。


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大縄茂/Shigeru Onawa
(おおなわしげる)

有限会社デザインオフィス ジー・ワン/取締役

Mail:designofficeg1@mac.com
URL:http://homepage.mac.com/designofficeg1/

1951年生まれ、桑沢デザイン研究所卒。
自動車部品メーカー、写真照明機器メーカー、ID事務所勤務を経て1977年独立。
1985年 法人登記、有限会社デザインオフィス ジー・ワン取締役就任。
1992年 韓国カメラメーカーデザイン顧問歴任。
1999年 「第26回国井喜太郎産業工芸賞」グループ受賞。
その他、国内外デザイン賞多数受賞、専門学校非常勤講師。

更新日:2012.01.06 (金) 07:53 - (JST)