museum|JIDA東日本ブロック                     

ミュージアムのためのグラフィック by吉田晃永

JIDAに入会するのとデザインミュージアム委員会に入ったのは同時のことでした。

そのため私にとってJIDA = デザインミュージアム委員会(以下DM委員会)の
活動であったといえるでしょう。
ちょうど入会した頃DM委員会はJIDAーDMセレクションVol.3の時期で、良く解ら
ないままそこに参加し右往左往していたのを憶えています。
その後様々な展やイベントなど運営に携わるようになり、デザイナーとしてだけで
は難しい、多くの経験や勉強をする事ができました。

私は普段プロダクトデザインとパッケージデザインを主とした仕事をしていますが、
元々デザインの業界に入った当初はグラフィックデザインからスタートしたという
事もあり、様々な活動の中で数年前から印刷物のデザインにも携わらせてもらって
います。
セレクションなどは回を重ねる毎に少しづつストーリーもできてきましたので、
それら印刷物について少しご紹介をしたいと思います。


★JIDA−DMセレクション図録:表紙デザイン★
お気に入り

Vol.1から続くイメージを踏襲する必要もあり、Vol.3から図録に使用された色や
エンボスはそのまま継承して使用する事は決定された条件としてありましたが、
それ以外のグラフィックに関しては比較的自由に表現させてもらうことができました。
この図録は世界中のデザイン関連機関や美術館などに向けても発送されることもあっ
て、内容は全て日本語と英語の2カ国語で構成されています。そのため表紙も海外に
出た時を考慮して「日本」らしさも表現した方が良いと考え、自分なりにそれを形に
することにしました。

● JDMS Vol.7
担当最初の意気込みというのもあって、大胆な「勢い」を表したいと思い漢数字の
「七」を勢い良く見えるよう、自ら何枚何枚も書き、それでも気に入ったラインが
出せなかったので、その後何度も重ね書きをして納得するラインが出るまで繰り返す
ことで、やっと気に入るラインが出るところまで至りました。最終的にその出来
上がった「七」をスキャンしトレースして版データ化した後、できるだけ大きく
「七!!」と見えるようにレイアウトしましたが迫力の程如何でしょう?。

● JDMS Vol.8
前回のVol.7の流れで行くと末広がりでもある漢数字の「八」と行きたいところでは
あったのですが、逆にVol毎の変化見せたいと考え、対比させるように「繊細」さを
表現することにしました。
英数字「8」を上半分の真円を書いた所で一旦筆が止まり、更に下半分の真円を書い
たよう見えるよう、所々の線の太さを変化させ呼吸を止めて書いたかように緊張感の
ある細い線で表現してあります。
自分が担当した表紙の中ではコレが一番気に入っています。

● JDMS Vol.9
はそれまでとは全く違った考え方で、自分の中にある日本らしいイメージから「9」
のモチーフを抽出して、そこからまとめるという方法をとりました。
手書きの部分が一切無いため少し無機質に見えるかもしれません。

どんどん色々な物がWeb等デジタル化される中、やはり画面とは違いズシリとした物
として手にした感覚だけはまだまだ得られるものではありません。
今後もその手にした時の悦びが湧き起るグラフィックができたらと思います。


★JIDA−DMセレクション展:案内用フライヤー デザイン★
お気に入り

JIDA-DMセレクションのシンボルとされてきた通称「ハットマーク」を3D-CGで
立体化した物を使いたいというイメージは自分の中では固まっていましたが、それを
何度も回数が重ねられてゆくことを表現するためにグリッド状に並べて使用すること
にしました。

● Vol.7では、その視点を立体マークと同じ目の高さとし、奥行き感を出し迫力ある
レイアウトとしてみました。当時使っていたMAC(G4)で3D-CGのレンダリングを
行ったのですが、いくら単純な形状とはいえ、ここまで本数が多いと1回では出来ず、
奥行き毎に何回かに分けてレンダリングし最終的にそれを合成したのを憶えています。

● Vol.8では視点を少し上昇した場所から見下ろした状態で、マークが整列して迫っ
て来るような表現としてみました。シンメトリーレイアウトで安定して見えるよう
まとめてみましたが、入稿寸前に図録表紙が決定されたため、そこで使われる「8」を
急遽入れてみました。
元々傾けてデザインした「8」でもあり、無理やりパースを付けたことも重なり
ちょっと違和感が出てしまったかもしれません・・。

● VOL.9ではマークがグリッド状に並ぶと3×3のスクエアに配列される事を利用し、
真上から見た状態で中央の1本を倒し「9」である事を表現してあります。倒れて見え
た部分に図録表紙で決定された「9」を表現した印が見えたとうストーリーにしました。

ここまで視点が地上から上空に浮上するように進んで来た流れですが、この後更に何処
に向かうのか悩み所です。ただ、それもまた逆に楽しみです。次回も引き続き私が担当
した際にはこの続きがどうなったかご覧ください。


★JIDA−DM1号館十周年:記念誌 表紙 デザイン / 記念展案内ポスター デザイン★

お気に入りお気に入り

如何に限られた予算内で「記念誌」に相応しい物とするか、様々な特殊印刷使ったデザ
イン案を何点か作成し、それらの見積を取った上で迷いに迷って仕様を決定しました。

濁りの無い白さに拘ったパール系の紙をベースに、タイトルを箔押しで様々入れ、開い
た時にだけ現れる漢数字の「十」をシルバーで表、背、裏にまたがるように入れてあり
ます。これは様々な事が交差するイメージとしてローマ数字の「X」、漢数字の「十」の
何れかを使いたかったのですが、そのまま前面に出すとその形が持つ負の印象が強く出
てしまうため、このように隠れるように表現してみましたのですが、少々判りづらかった
でしょうか。

企画展案内のポスター等も同じ1号館十周年記念事業として同系色を使い、展示をイメー
ジしやすいようまとめました。既に展示物の写真が揃っているような時には、このような
方法が一番雰囲気が伝わりやすいのかもしれません。



デザインのプロが集まる団体の中でデザインをするということは、「見る人のデザインの
評価も厳しいだろうな」という緊張感があります。
逆に「直感的に伝わりやすい」という安心感のようなものもあります。

印刷物に限らず、これらの活動は大変ですが仕事では得られないまた違った醍醐味があり
ます。
今後もDM委員会だけに限らず様々な活動を楽しめたらと思っています。



吉田晃永/Terunaga Yoshida
(よしだ てるなが)

デザインオフィス・アルテサーノ/代表
Mail:artesanojp@nifty.com
URL:http://www.artesano-design.com/

プロフィール:
1965年生まれ
グラフィックデザイン事務所、日立(CADセンター)、リクルートを経て、
東京デザイナー学院プロダクトデザイン科に入学。
卒業後自動車用品メーカーで主に商品企画・開発を担当し、
1995年松戸で独立(デザインオフィス・アルテサーノ)

その他:JPDA会員、専門学校非常勤講師

更新日:2012.01.06 (金) 08:06 - (JST)