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(株)安川電機運動療法装置 TEMシリーズの開発を通して by 田辺 正紘

1998年(株)安川電機からの依頼で、NEDO技術開発機構のミッションの1つである

このプロジェクトは始りました。
このプロジェクトの目的は脳卒中などで入院を余儀なくされた方々の早期回復や、
身体機能を維持する介護予防等でのリハビリ治療をするロボットの開発でした。
それまでのリハビリは理学療法士の辛抱強い手技が必要とされていました。

工業ロボットで培った技術を生かし、理学療法士の動きを正確に繰り返し再現して
患者の機能回復を速めることがこの装置の目的です。



原案(上図)はベッド上の足を置く部分に装置を置いただけの原理的な装置でした。

この原案を実際のリハビリ治療現場に持ち込み臨床治検とともに、医師や理学療法士の
方々と幾度となく使用上の問題点やブレーンストーミングによるアイデアの出し合いを
重ねました。私たちもこの会議に参加することにより歩行についての人間工学上の意味、
障害の種類、傾向などを学び理解し、この装置がどうあるべきかを模索しました。

はじめのイメージスケッチは多岐の方向から将来の可能性を含めて提案しました。
中には最近話題になっているマッスルスーツに近いプランなどもありました。
その中から、当初から実験を進めて来たベッド一体型のプランが実現化し易いとのこ
とで選ばれ、それを基に(下図)が造られました。



さらなる改良のため再び現臨床治検と会議が繰り返されセッティングのし易さ、
患者の恐怖心取り除く配慮、安全性のため材質、注目色、注意色の配置などより詳細な
提案が盛り込まれ次期モデルTEM LX1が誕生しました。 (下写真)

その後プロジェクトは2つの方向
1. 歩きを突き詰め仰位から立位歩行まで再現して訓練ができるパ−フェクトな装置
2. 何時でも患者のそばに運べ使用可能な実践型装置に分かれました。

10年近い歳月をかけてその後も改良が重ねられ最新のベッドサイド型 TEM LX2
typeDが2007年グッドデザインを新領域デザイン部門で受賞しました。

このような長い期間を通してのプロジェクトに携わったことはデザイナーとして大変
貴重な体験であり、実績になったと思っています。



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田辺 正紘/Masahiro Tanabe

(株)TIDデザイン/代表取締役

Mail:tanabe@tid-design.co.jp
URL:http://www.tid-design.co.jp

プロフィール
桑沢デザイン研究所ID専攻科卒業。JIDA正会員(335-F)
1982年(株)TIDデザイン設立
専 門機器を中心にメーカー・ユーザー双方の立場にたった、息の長いデザインを心がけています。また、工業デザインだけに留まらず情報収集分析から企画、設 計、試作、販促企画、CIなど企業の質を高めるための総合的サービスを目指しています。日刊工業主催機械工業デザイン賞をはじめGマーク各種受賞。

更新日:2012.01.06 (金) 07:59 - (JST)