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工学院大学「今和次郎コレクション」と関連フォーラム

東日本ブロック09年度事業 連続フォーラム 第9回 報告


日時:2009年11月25日(水)
訪問先:工学院大学新宿キャンパス
共催:JIDA2010ビジョンクエストを推進する東日本ブロック委員会主催









今和次郎のスケッチ、そして今日のデザイン
工学院大学図書館が所蔵研究している、あの今和次郎の猛烈な観察スケッチ
を見る機会が、同図書館のご好意により実現することになり、同時に、今日
の生活の道具のデザインに関わるJIDA会員も加わったフォーラムを共催する
運びとなりました。

生活の実態を直視し、民家研究から考現学、生活学創始に至る今和次郎の多
彩な研究活動と思想を振り返ると共に、改めて今日の製品デザインの考え方
進め方など実体を紹介し、今後のあり方を探る機会としました。                                      


第1部 今和次郎コレクション展覧会見学:ーーーーーーーーーーーーーー
10:30〜12:00    会員15名
研究者の荻原正三教授のご説明で、民家調査資料(見聞野帖、野帖)、
考現学調査(しらべもの展覧会資料)、欧州調査資料(欧州紳士
淑女以外)などを中心とした貴重な現物資料多数を見学しました。

第2部 フォーラム:ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
13:00〜16:00    第1会議室 一般参加者+会員

タイトル:今和次郎×今日のデザイン

・「今和次郎と考現学研究」:なぜ今、今和次郎かを問う
荻原正三工学院大学名誉教授 工学博士

・「今日のプロダクトデザイン」                        
今日の製品デザインの概念・方法・先端の問題を紹介
横田英夫JIDA副理事長(株)ノーバス 

・「今和次郎!学の眼ざしと明日のデザイン」               
人造物「道具」と「ひと」のホントのかかわりを解く−デザイン
学の基点から明日のデザインを!
山口昌伴JIDA名誉会員 道具学会会員(現会長)日本生活学会
会員 著書「台所空間学」にて日本生活学会・今和次郎賞受賞




・初めに、コレクションを研究している荻原教授から、今和次郎が「人間は
最低限どのくらいあれば生活できるか」を研究している最中に起きたという
関東大震災時のバラック調査のエピソードを始め、国内外の考現学「モデル
ノロヂオ」調査の徹底したスケッチや資料多数をスライドで体系的に紹介さ
れました。

・次に、JIDA副理事長の横田英夫氏が、JIDAの概要、最近の活動、Gマーク
の選定商品など日本のブロダクトデザインの様子を幅広く分り易く紹介しま
した。 
また具体的な開発事例として同氏が関わったユーザー中心設計(UCD)の券
売機デザインを取り上げ、何回も試作機を作り、身障者や子供など多様な使
用者が参加して練り上げていくプロセスを詳細に説明し、最新のデザインの
方法を説明し関心を集めました。また新刊「プロダクトデザイン」を紹介し
アピールしました。




・最後に「今和次郎!学の眼ざしと明日のデザイン」と題して、今和次郎に
師事した経験を持つ山口昌伴氏が、高校の時に買った「考現学・モデルノロ
ヂオ」をOHPで紹介しながら熱く語りました。早大で今教授と出会い教授宅
へ手伝いに通って、教授の独特な笑いに怖さと奥深さを感じながら「眼ざし
を芯から学ばされた」ことなど、今和次郎の人間像を活写することにより
「眼ざし」の思想を甦らせました。そしてその視線を今日のデザインの根底
に鋭く向けたように思えました。それはまた、山口氏自身の眼ざしであり
山口氏のデザイン学の基点といえましょう。
コレクション展へ来た人びとも含め、多くの人が興味深く聞き入っていまし
た。

尚、今回は連続フォーラムとして初めて工学院大学図書館と共催の形で開催
しました。
フォーラムタイトルの「×」は「+」や「と」ではなく、一見距離のある相
互の対象を掛けることによって問題の所在を大きく捉えることを期待したも
ので、学生の今日的感覚を反映するものとして大学からご提案があり決定し
たものです。
またポスターは佐野正氏(JIDA)が担当するなど様々な点で協力して成立し
ました。同大学の荻原教授および図書館の石川敬史氏のご好意に改めて感謝
致します。


■レポート:佐野邦雄

更新日:2012.01.06 (金) 11:47 - (JST)