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JIDA PRODUCT DESIGN SEMINAR

「プロダクトカラーの基本から現場」 3回シリーズセミナーを開催して


スタンダード委員会
職能委員会プロ・アカデミー部会




開催趣旨
この表題のセミナーは、スタンダード委員会と職能委員会プロ・アカデミー
部会が共同で企画、実施した。JIDAではセンター委員会、各ブロック単
位で、セミナー、フォーラム、ワークショップ、見学会、展示会、研究会な
どさまざまな形式のイベントが開催されている。それらの中には、10年以上
も継続されているものがあり、新しく始められたものもある。対象も、JI
DA会員に留まらず、広く社会の多くの人々に開かれている。

しかし、これだけやっていても、「JIDAは何をやっているのか見えない」
という声がある。これには量と質の問題があると謙虚に考える必要がある。

まず広報の量である。これは広告の露出頻度と人の認知度は比例すると言わ
れているとおりであり、この点では、残念ながら現在のJIDAの力では限
界がある。ただし、先程あげたように、長年に亘り持続的に社会に発信して
いる実績がある。また、散発的で分散したパワーを集中と選択で効果をあげ
ることを考える価値はある。次は質の問題である。人は「興味がないものへ
は自主的に情報を遮断してしまうもの」と言われるように、ニーズやウォン
ツを読んだ内容を提供する、これは商品開発で言われることと同じであるが、
この点での工夫の余地は大いにある。

プロ・アカデミー部会では、以上のような視点から、JIDAの多様で多彩
な活動をCPD制度(HOTLINE NEWS Vol.82参照)というプラットホームに
のせて運営し、社会的プレゼンス向上への相乗効果を発揮できないかと検討
してきた。一方、スタンダード委員会では、デザインの現場で必要とされる
材料、仕上げなどの知識共有、更に目と手で確認できるサンプル帳の企画、
制作から頒布までを一から立ち上げ、多くのデザイナーから「こういうもの
を求めていた」という評価を得ている活動を行なってきた。このセミナーの
企画、実施を機会に、スタンダード委員会の活動をさらに広く知っていただ
くこと、今後のCPD制度構築の参考にすることも意図した。




今回のテーマのネライ 
この企画テーマの発端は、JIDAをもっと若い人が集まる活気あるものにし
たいなど、数人の雑談であった。DICカラーデザイン�で40回ほどカラーを
テーマに多数の講師共々開催してきた経験から、各分野のデザイナーや企画、
販促部門の若い人が多く集まることを話したことがきっかけになった。
プロダクトデザイナーは他の分野に比べ、どうも色を苦手、あるいは形や機
能ほど重要視していないことを一般的に感じている。実は、五感(特に視覚)
に訴える力が7割位占めるのが色彩と言われているのに、特に立体物を扱う
プロダクトや建築の方は「重要なのは分かっているけど」とよく言われる。
日本の色彩教育が色彩調和論をベースとした「平面の世界」で行われてきた
ことも一因だと思っている。

そんな中で、基礎的な「色のものさし」、「明度差配色」、「色材」などの
話をおさらいし、実際に色を扱って、そして成功しているプロダクトの現場
の方々の話を聞けば、大いに参考になるのではと考えた。また、このご時世
金型投資もままならない中、色や質感を替えることは投資もはるかに小さい。

色彩は無限であるばかりか、好みも多様であるが皆が納得できるよう、どん
な手順で何に重きを置いて決めていったらいいか、「Must」は何で、「Tre
nd」は何かなど、感性に「Plus」する要素を理解していただきたいと考えた。


開催内容 

【第1回】 2009年1月30日(金)/参加者87名
講師:山口正幸氏(DICカラーデザイン株式会社)(JIDA正会員)
「デザイナーに必要なカラーの基礎知識・発想の素/調査・分析」
講師:佐藤敏明氏(日本電気株式会社)(JIDA正会員)
「NEC携帯電話に見るカラーとテクスチャー戦略の変遷と現在」




【第2回】 2009年2月27日(金)/参加者82名
講師:山口正幸氏(同上)
「シート印刷による色・柄・質感表現/塗料用光輝材の色調と質感」
講師:吉富 京氏(日産自動車株式会社)(JIDA賛助会員)
「日産自動車のカラー戦略とクリエーションの現場」
講師:高津 晶氏(株式会社資生堂)
「資生堂“つばき”に見るカラー戦略とパッケージ」




【第3回】 2009年3月13日(金)/参加者75名
講師:山口正幸氏(同上)
「プロダクトカラーの役割/記憶色と記号色/見えない配色」
講師:信乃亨氏 (キヤノン株式会社)(JIDA賛助会員)
「キヤノン“IXYデジタル”へのカラーとテクスチャーへのこだわり」
講師:岡庭義岳氏(エヌテクノロジー株式会社)(JIDA賛助会員)
「最新リアルタイムレンダラーによる素材とテクスチャー表現」




各回の最後には、講師と会場参加者との質疑応答、意見交換を行った。
また、会場の後方には、本事業に協賛いただいたエヌテクノロジー株式会社の
デジタルライブラリーのデモ展示と、JIDAスタンダード委員会企画・制作の
「JIDA STANDARD SAMPLES」No.1、No.2、No.3及び新発売のNo.4
(アルミの素材と表面処理)の紹介コーナーを設けた。
なお、会場はいずれも六本木ミッドタウン・タワー5階インターナショナル
・デザイン・リエゾンセンター。 


結果考察と今後の展開
今回のセミナーは、3回すべてにおいて参加申し込みが募集定員をオーバー
し、キャンセル待ちもでた。現在の社会経済情勢を考えると予想以上の結果
であった。アンケートの集計が本稿の締め切りに間に合わないが、参加者か
らの満足度は高かった。この成功要因、というと大袈裟に聞こえるが、その
ポイントは以下のように考えている。

①テーマ・・・「カラー」という基本的で明快な主題を、基礎・理論編と応
用・実践編を併せてプログラムしたこと。

②広報・・・テーマに関連する2団体(日本ファッション協会流行色情報セン
ターと日本パッケージデザイン協会)の後援を得、その会員への広報も行なっ
たこと。

③運営・・・3回シリーズ通し参加の場合の費用を1回毎に比べて割安にした。
これは約8割が通し受講を申し込む結果を生んだと思われる。また、参加費は
事前銀行口座振込みにしたことで、事前の手間はかかるが、当日受付の効率化
が得られた。さらに、3回開催のうち、2回が当日雨天であったことを考えると、
総合的には有効な方法であった。

以上の要因は、同じように応用できるとは限らないが、今後この種のイベント
開催の参考になるだろう。勿論、JIDAがイベント団体でないことは当然で
あり、会員各位が苦労して社会的な事業活動を行っている現状を少しでも改善
するための情報共有という意味である。

今後の展開としては、今回のアンケートも参考にし、近々発刊予定であるJI
DA監修・編集の図書「プロダクトデザイン−商品開発に関わるすべての人へ」
の内容とリンクさせたテーマ設定である。これには、冒頭の趣旨で述べたよう
に、全国で開催されるJIDAのイベントがより社会に見えることを第一のネ
ライとして、関連団体との協力も欠かせないが、まず何よりもJIDAのセン
ター、ブロック委員会の連携が鍵となる。CPD制度はその触媒となるとともに、
会員を含め継続的に専門能力を開発しようとするモチベーションの高いデザイ
ナーへのインセンティブとなることができれば良いと考えている。 


■レポート:山内 勉+山口正幸

更新日:2012.01.06 (金) 10:38 - (JST)